野条 美貴 様
平成31年3月2日、中野サンプラザにてセミナー「資格・スキルを活かして いきいきとした人生を送ろう!」を開催致しました。 本講演会は、一般社団法人全国産業人能力開発団体連合会(以下、JAD)の平成30年度 キャリア形成支援シンポジウム内にて行われました。今回は、キャリアコンサルタントの野条 美貴様(東京工科大学 デザイン学部 デザイン学科 特任講師) をお招きし、キャリアについての考え方について、お話を伺いました。
自分に自信を持つということ
次に、「自分に自信を持つ」ということですが、「自分に自信のない」人、手を挙げていただけますか。(会場内で手が挙がる)結構いらっしゃいますね。あるいは、自分には自信があるけれども、周りに自分に自信を持っていないと感じている人もいますよね。その人たちにも、アドバイスをしていただけたらと思いますが、カナダの心理学者 バンデューラによると、自信(自己効力感)を出すための4つの方法として、まず1つ目に「過去に自分が成功した経験」が力になるということが挙げられます。皆さんがこのように資格を取るために努力をして頑張ってきた経験が成功体験です。資格を取って活かせていないから自信がない、という人には、「資格をどうやって勉強しましたか」と聞きます。すると、働きながらであったり、家事をしながらであったり、一生懸命時間を作って資格取得に向けてしっかりと目標を定め、そのために計画を立て、資格を取得するという結果を出す。本日優秀者として表彰される皆さんは、まさに結果を出していますね。資格を取ったということはもちろん、取った資格を活かすということもありますが、取るために努力してきた皆さんの経験が、皆さんの強みになっているということです。目標を立て、計画をし、確実に行動にできる実行力を、皆さんは身につけていらっしゃいます。そこにまずは自信を持ってください。
それから、2つ目に「うまくできている人をモデルとして観察すること」です。これを、ロールモデルと言います。自分が目標にしたいという人は、皆さんはいますか。是非そんな人を見つけてください。例えば資格を持って大活躍している人の話を聞くのも、自信を持つためには必要になってきます。
3つ目として、「自分に能力があるということを言語的に説明されること」です。つまり、周りからの励ましや「すごいね」という言葉です。本日表彰を受ける皆さんは、まさにそれを自信に変えてください。
4つ目に、「生理的な何らかの刺激によって気分が高揚されること」とありますが、つまり皆さんが好きなことを思いきりやる、ということです。例えばカラオケで10曲連続歌うとすっきりする、私の場合は温泉に入って美味しいものを食べる、ということなのですが、何でもいいです。皆さんの気分が良くなるようなことを見つけて、そういう時間を見つけてやっていく、というようなことも自信につなげていくことにもなります。
最後に、「自分の仕事観を明確にする」とありますが、実はこれが大事なことになってきます。皆さんの資料に「内因的仕事観」「功利的仕事観」「規範的仕事観」と文言があります。ここでいう仕事とは、会社に勤めることだけを指すのではなく、子育てをする、地域のボランティアをする、これらも全て「働くこと」「仕事」として、ご自身の価値観を考えてほしいと思います。皆さんは、自分自身の働く目的、あなたにとって仕事とは何なのか、何が大切かを考えてみてください。
仕事観を様々な角度から見つめて
「内因的仕事観」――これは何かというと、自分にとってもたらされる、心理的報酬に基づく考え方。自分にとって価値の根源となるもの。例えば、やりがいです。私にとってこの仕事、資格を活かすこと、この資格を取ったら私自身が成長すると思える、とか。あるいは今までできなかったけれども、この資格を取って私はこんなことができるようになった、というのも、内因的仕事観です。それから、チームの一員になって資格を取ったことで、チームにとって自分が役に立っているという感じ、この資格を取ったから、私はこの仕事を任されるようになった「認知承認」、この仕事をやってくれと言われるようになった、取った資格を使うことで仕事内容そのものが「楽しい」ということも、実は内的な仕事観だと言われています。皆さん、当てはまるものはありましたでしょうか。
「功利的仕事観」――これは外因的とも言えるのですが、2つの観点があります。1つは「成功獲得手段」と言いまして、例えば出世する、地位を身に着けるということは、金銭的な成功も意味します。働くことによって成功報酬を受ける、出世する、周りから「すごいね」と見られること。もう1つは、「損得回避手段」です。これは何かというと、失いたくないものを失わないために働くことです。例えば、家族が路頭に迷わないようにするために働く、あるいは資格を活かすこともあるかもしれません。
最後に「規範的仕事観」があります。これは、自分のためだけではなく、人のために自分にとって何らかの意味があるものをやっている、この資格を活かすことで私は社会の何かのために自分が役に立つ考え方です。社会なのか、地域の人なのか、誰かのために、というように、国のため、社会のため、あるいは会社のため、お客様のため、このようなものが、「規範的仕事観」となります。そのために、資格を活かす、働いていく、資格を次の世代へ伝えていく、人を育てることに使っていくということも、非常に大切な「規範的仕事観」だと言われています。
皆さんはそれぞれいかがでしたか。この3つの仕事観から、自分にとって資格を活かすとはどういうことなのか、何のために働くのかを、じっくり考えてみてください。今挙げた3つのうち、どれが良いかということではないのです。ただ、お話を聞いていて良くあるのが、「内因的仕事観」や「功利的仕事観」において、仕事を自分自身や家族のためだと考えていらっしゃいますが、3つ目の観点を持っていない方がいらっしゃいます。持っていないのではなく、考えたことがないという人がいます。「規範的仕事観」の観点を持つことは、自分がこれから仕事をどう活かしていくのかヒントになると思います。
資格を活かすための第一歩を踏み出そう
今、資格を活かせていない人は、今の環境や役割の中で、できることをやってみてください。時間がないなら時間のない中で、どうやって時間を作るかを考えること、それから、一歩を踏み出すための行動をしましょうということです。今日ここにいらっしゃる皆さんは、これからどうしていこうか、という一歩を踏み出していますよね。この後の交流会等で他の人からのお話を聞いて、心の中で葛藤やモヤモヤが起きてくるでしょう。そんな風にまずは、はじめの一歩を踏み出していただきたいです。そして、資格を活かして働くにはどうしたら良いのか。ここもやはり「主体的」に、人から言われるのではなく、自分から行動することを大事にしてください。今の職場で、更に自分が活躍するためには、何が必要か、あるいはどんな工夫をしたら良いのか、こういったところを考えてみることが、更に資格を活かすことにつながります。
また、ネットワーキングを活用するということ。これはとても大事なことです。私自身が所属している職能団体には、18,000人が所属しているのですが、そのうちの支部の中で、勉強会などを会員の皆さんと一緒に企画し、行っています。そのような人たちから、様々な生きた経験を聞くことが、自分自身のカウンセリングのスキルアップに役立っています。本日こうした場で、出会った人から経験を聞き、様々な情報や知識を、是非増やしてください。
それから、スキル開発をすること。例えば、皆さんがお持ちの資格の上位資格を目指すことも、その1つだと思います。私の場合、キャリアカウンセリングをしていると、キャリアの資格を先に取ったのですが、相談をしている人がキャリアの悩みなのか、メンタルヘルスで悩んでいるのか分からないことがあります。悩んでいる人自身も分からないといった状況が起こります。仕事がうまくいかないから体調が悪くなるのか、人間関係がうまくいかなくて体を壊してしまったのか、あるいは、体調が良くないから仕事のパフォーマンスが上がらなくなっているのか、様々な要因があります。
そこで、今の私に必要なスキルは何だろう、資格は何だろうと考え、公認心理師(昨年国家資格化)の資格取得に向けて、勉強しているところです。1級キャリアコンサルティング技能士についても、何度もチャレンジしているのですが、合格するまで受けていきたいと思っています。なぜチャレンジするのか?と考えたときに、資格を取ったからどうということではなく、資格にチャレンジする自分が自信につながるし、勉強を続けていくことが、自分自身の仕事スキルアップにつながると思うからです。
最後になりますが、私自身は働く人が、心身共に健康で、1人1人の個性が発揮され、その人が自分らしく一歩踏み出して行動できるような支援がしたいと考えています。私1人だけでは、何もできません。仲間と共に、社会の中で、人と人とが支えあい、つながり、人が生きることに有意味感が持つことができるようになるといいなと考えています。かなり大きなことを言っていて恥ずかしいのですが、そんな風に考えると、今の仕事の辛いことや勉強の苦しさを忘れて、私自身頑張ろうという気持ちになります。以上を持ちまして、私からのお話を終わります。皆様ご清聴、ありがとうございました。
講演者プロフィール
国家資格登録キャリアコンサルタント
2級キャリアコンサルティング技能士、 CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)、 2級FP技能士、 メンタルヘルス・マネジメント検定I種 等
サービス業界での採用担当者として勤務後、育児のため退社。9年間の専業主婦を経て、 家族の転勤を機に、公的な就労支援機関に再就職。現在は大学の就職担当教員や 企業で働く人々へのキャリアコンサルタント業務に従事。