人生のライフイベントが多い女性なら誰しも、一度は自分のキャリアについて考えるはず。理想のキャリアを形成するためには、さまざまなスキルや知識を身につけていくことが重要です。
しかし、身につけたスキルや知識は目には見えないもの。そこで役立つのが資格です。
今回は、資格取得をきっかけにキャリア形成を実現した女性たちによる座談会を開催しました。
キャリアチェンジのきっかけ
根本 今回はキャリアカウンセラーである私が、柳瀬さん、鹿島さん、高鷲さんの三名から、女性のキャリア形成をテーマにお話を伺います。
今回お集まり頂いた方々は、資格取得を契機にキャリアチェンジを果たしたという共通項があると伺っています。
まずは、皆さんの現在の職業や、キャリアチェンジをしようと考えたきっかけについてお話しいただきたいと思います。
柳瀬 私は家具販売会社で働いており、管理職としてインテリアマネージャーを務めています。
もともとはIT 関係の会社にいたのですが、上司に女性がいなかったこともあり、40 ~ 50 代の頃に自分がどういった立ち位置にいるのか具体的なイメージが持てず、自分が本当にやりたいことについて改めて考えたのがきっかけです。
鹿島 私はニチイ学館所沢支店で医療事務の資格取得を考えている方や、資格を取得された方に対してのキャリア支援を行っています。
以前は学習塾で英語講師をしていましたが、結婚や出産など、今後のライフプランと就労時間の兼ね合いを考え、転職することを決意しました。
高鷲 私は資格の学校TAC で、ファイナンシャルプランナー講座の講師と、テキスト・模擬試験等の教材作成・校正の仕事をしています。
もともとは私自身がTAC の受講生として会社員や専業主婦をしながらファイナンシャルプランナーの講義を受けていました。
合格後、学校側から講師の仕事へとお誘いいただき、現在の職に就いています。
根本 皆さんの場合は、キャリアチェンジを考えただけではなく実際に行動に移されたわけですが、どのような経緯で今の仕事にキャリアチェンジのきっかけ至ったのか、教えていただけますか。
鹿島 私の場合は、転職を考えていた時に医療事務の資格を取ろうと思い立ちました。
医療事務講座の教室に通っていたところ、私の経歴に関心を持ったニチイ学館の支店長に声をかけていただき、現在の職場に勤めることになりました。
非常に良いタイミングでチャンスをつかめたと思います。
高鷲 チャンスをつかんだという意味では、私も似たものがありますね。
もともとは軽い気持ちで年金や社会保険などの知識を得たいと考え、ファイナンシャルプランナーの資格を取ろうと思っていました。
今の仕事をいただけたことはとても嬉しく、会社にはとても感謝しています。
柳瀬 私は本当にやりたいことを考えた時、学生時代からの夢だったインテリアに関係した職に就こうと思い立ちました。
そこで、IT 関連会社での仕事を継続しながら町田ひろ子アカデミーに通い、インテリアコーディネーターの資格を取得しました。
環境や気持ちをコントロールしてモチベーションを維持する
根本 仕事を継続しながらスクールへ通うことは苦ではなかったのでしょうか?
柳瀬 仕事との両立はもちろん大変です。私の場合は、いつもより1 ~ 2 時間早く起きて、スクールの課題や勉強をする時間を毎日作っていました。
また、家事との両立という点では、夫のサポートがあったので助かりました。
鹿島 私も最初は仕事を続けながら勉強していましたが、終業時間が深夜になることも多く、帰宅後に勉強することが非常に困難でした。
そこで、退路を断つ意味でも一念発起して退職し、資格取得のための学習に専念しました。
高鷲 わたしの場合は、仕事や勉強をする日は家事をしない、と決めていました。
あれもこれもやらなければと考えていると、できなかった時に自分自身に苛立ってしまいます。
なので、周囲の環境や自分の心をコントロールすることを心がけていました。
根本 こうした思いきりや、周囲の理解・サポートも大切ですよね。
そのほか、勉強法などで工夫した点はありますか?
柳瀬 テキストは重さがあるので、思い切って章ごとに切り取ってしまいました。
分冊して軽くなったテキストと問題集を持ち歩き、通勤時の電車の中でも勉強していましたね。
鹿島 私が取得した医療事務の試験はテキストの持ち込みが許可されており、知識を暗記することよりも時間内に正確に問題を解く能力が重視されます。
そのため、タイマーで時間を計りながら過去問を解く、という訓練を繰り返していました。
高鷲 通学時は、クラスメートと得意分野・苦手分野を教え合うことで互いに切磋琢磨し、自然と仲良くなることができました。
一人だけでは、途中で挫折していたかもしれません。
他の会社のさまざまな境遇の人の事情や悩みなどを話し合えたのは、今でも大切な財産です。
根本 同じ目標を持つ仲間がいるというのは、モチベーションを保つ意味でも重要ですよね。他のお二人はいかがですか?
鹿島 医療事務講座の受講生は30 ~ 40 代の女性の方が多く、会社にいるだけでは知り得なかったロールモデルとなる方々の話を聞くことができました。
私も柳瀬さんと同じように、当時の職場には女性のロールモデルがいなかったので、自分のライフプランを考える良い機会になりました。
柳瀬 私もお二人と同じで、スクールで多くの人に出会えたことは、とても刺激になりました。
みんなと話し合うと「頑張るって良いことなんだな」と、自分の価値観を変えるきっかけにもなり、人生という単位で見ても有益な時間でした。
資格を取得して見つけた“新しい自分”
根本 皆さんはそうした刺激を受けながら資格を取得されたわけですが、資格取得を機にご自身で変わったと思われることはありますか?
高鷲 前の会社にいたころは嫉妬や妬みなど、自分の心の中でマイナス思考が占めてきてしまっていました。
しかし、資格取得をきっかけに「周りがどうだから」ではなく「自分がどうしたいのか」を考えるようになり、自分自身がポジティブになれたと感じます。
柳瀬 私の場合は、「新しいことにチャレンジする」ことに恐怖感がなくなりましたね。
町田ひろ子アカデミーは授業や課題の厳しさでも定評があるのですが、それを乗り越え、さらに資格も取得できたことで自信がつきました。
何かあった時も「あの時あれだけ頑張れたんだから」と考えれば、自然と前向きにもなれます。
今も当時のモチベーションがずっと続いていて、新しい世界に触れるチャレンジを続けていきたいと考えています。
鹿島 私も新しいことを覚えたり、チャレンジすることが苦ではなくなりました。
実は今日も、「ジョブ・カード講習会」の講習を受けてきたのですが、人材育成に関する新しい知識やスキルを得ることができ、とても刺激になりました。
現在のキャリア支援の仕事をしていくうちに、ワンランク上のキャリア・コンサルタントの仕事にも興味を持つようになりました。
今の仕事に就くことで「自分は人と接することが好きなんだ」と、改めて認識できるようになりました。
根本 「資格を取る」という目的から出発して、自分自身の長所を再発見し、今後の目標も定まっていくんですね。
そうした目標を含めて、皆さんが今後積み上げていきたいキャリアについてお聞かせください。
柳瀬 資格取得後、今の職場では多くの選択肢を選べるようになりました。
今よりもっと上のポジションを目指し、将来は本社へ行き、グローバルな仕事をしていきたいです。
ただ、現在は管理職に就いたばかりなので、自分のチームメイトの成長や会社への貢献、インテリアコーディネーター・デザイナーとしてさらにスキルアップしたいなど、やるべきこと、やりたいことがたくさんありますね。
鹿島 今後は後輩ができるので、後輩を指導し、仕事を学んでもらうための方法を模索していくつもりです。
将来は、今の職場の経営管理など、みんなを引っ張っていく存在になりたいです。
最初はひとつの資格取得から始まったことですが、今はやりたいことがどんどん広がっていっています。
高鷲 ファイナンシャルプランナーからのキャリアアップというと税理士や社労士を目指す方もたくさんいらっしゃいますが、私は資格を積み上げるのではなく、めまぐるしく変わる法律などにアンテナを巡らせ、鮮度を保ち続けるようなキャリアの「更新」をしていきたいです。
本当の自分に出会うための新しい一歩へ
根本 最後に、自分の境遇で学習を続けることができるのか、資格取得ができるのか、と悩んでいらっしゃる方々へメッセージをお願いします。
柳瀬 仕事や家事をしながら資格を取ることは、生半可な努力でできることではありません。
途中で挫折しないためには「自分で決めた以上、必ずやる」という強い意志が必要です。
ご自身で覚悟し、何があっても乗り越え、やっていきたいという気持ちを持ってください。
何もやらない自分よりも、何かやった自分の方がきっと好きになれます。
資格を取ろうと踏み出したその一歩だけでも、人生はより素敵なものになるはずです。
鹿島 キャリア支援の業務で同じような相談をされた時は「やりたいと思った時がやり時ですよ」とアドバイスしています。
足踏みしてしまう原因があるのならば、その問題はどうすれば改善されるのか伺い、ご自身にも考えてもらいます。
制約だと思っているものを取り払い、「いったい自分は何がしたいのか」と問いかけてみれば、自ずと見えてくるものがあるのではないでしょうか。
高鷲 今の境遇に悩みがある時は、どんな資格があるのかを調べたり、講座のセミナーに参加するなど、小さくてもいいのでまずは一歩、踏み出してみてはいかがでしょう。
資格取得はネームバリューだけではなく、「自分で決めたことをコツコツ継続できる」という証明にもなります。
今の状況でうまくいかなくても諦めずに挑戦し続けていれば、違うところでその人に適した何かがきっと見つかると思います。
根本 今日お話を伺った皆さんは、ご自身で進むべき道を決断され、それがきっかけとなりより豊かな人生を歩まれています。
彼女たちの体験を参考に、資格取得を悩まれている方もぜひ、勇気を出して新たな一歩を踏み出してみてください。
プロフィール
鹿島 様(主な保有資格:メディカルクラーク(医科))
高鷲 様(主な保有資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者)
柳瀬 様(主な保有資格:インテリアコーディネーター)
根本 様(主な保有資格:2級キャリア・コンサルティング技能士、JCDA認定CDA)