これから普及が進むジョブ・カード。どのような背景で誕生し、今後どのように活用されるようになるのか。
厚生労働省 職業能力開発局 実習併用職業訓練推進室長 河野恭子様にお話を伺いました
国のバックアップで本格的な普及活動スタート
河野室長によると、ジョブ・カードは、学校を出ても正社員になれない、いわゆる就職氷河期を背景にして誕生したものだといいます。
「フリーターや非正規雇用の労働者など正社員経験が少ない方を対象とした職業能力形成プログラムの一環として、ジョブ・カードは生まれました。
キャリア・コンサルティングを受け、職業訓練の修了後の評価結果や職務経歴などをジョブ・カードに取りまとめることで、就職活動やキャリア・アップに活用できるようにしたものです。
受講者から『就職活動にとても役立った』、また企業からも『採用の指針になる』など、両者から高い評価が得られました」。
そこでジョブ・カードを広く求職者や学生の方等にも活用してもらうための周知に努めているとのことです。昨年度は学生用ジョブ・カードも開発。
今年度より厚生労働省、内閣府、文部科学省、経済産業省が協力して、本格的な普及活動もスタートしました。
経験を棚卸して、自分を知ることができるツール
ジョブ・カードは目的意識を持って就活するのに、とても役立つツールだと河野室長はいいます。
「ジョブ・カードの目的は、キャリア・ビジョンを明確にすることです。
自分だけの視点では視界が狭くなりがちですが、キャリア・コンサルタントと面談し、ジョブ・カードを作っていく過程で、一人では気づかなかったことが見えてくることも。
たとえば正社員経験がなく『アルバイトで働いただけ』と思っていても、職務ごとに詳細な業務内容や実績を棚卸してみると、得意な分野などがわかってきます。
学生の方も、ボランティアやサー クル活動なども含めた自分の強みやアピールポイントがわかり、企業のエントリーシートの基礎資料にすることもできます。」
またジョブ・カードは就職すれば終わり…というものではないといいます。
「将来、キャリア・アップを目指したい時などにも役立つので、作成したものはずっと持ち続けてほしいですね。」
応募書類として使う企業も、今後増える見込み。
普及に伴い、 ジョブ・カード自体を応募書類として活用する企業も増えていく見込みだと河野室長はいいます。
「現在、全国の商工会議所などを通して、ジョブ・カードを採用に取り入れる企業を募っています。
企業にとっては独自のエントリーシートを作成する手間が省け、応募者も自分のことを詳しく知ってもらうことができます。
就職氷河期といわれる一方で、優秀な人材確保に悩む企業もあります。
マッチングがうまくいけば、双方喜ばしい結果になれるでしょう」。
ジョブ・カード活用のメリット
1.これまでの職務で得られた知識・技能が整理でき、自己PRポイントが明確になります。
2.学生の場合は、学校活動歴、アルバイトや社会体験活動なども含め、自分の強みやアピールポイントを明確化できます。
3.応募書類の基礎資料としてや、採用面接等での自己PRシートなどに活用できます。
4.応募書類として受付ける企業に対しては、具体的な職業能力やレベル、人物評価など多面的なアピールができます。
5.生涯にわたって使用・管理できるので、将来のキャリア意識向上にも役立てられます。
プロフィール
河野恭子 様
厚生労働省 職業能力開発局 実習併用職業訓練推進室長