日本語を学びたい外国人の方への日本語教育や、日本語教師養成を行っている新宿日本語学校に、指導方法や学校での様子について伺いました。
独自に開発したオリジナル教授法を用い、日本語の意味を決める「助詞」をわかりやすく教えています。
1951年に宣教師を対象に日本語教育を開始した江副隆愛・勢津子夫妻が、1975年に新たに長男隆秀を加え、一般成人を対象に日本語学校を設立しまし た。
それが現在の新宿日本語学校のスタートです。
日本の大学などで「留学生」を受け入れるようになったのは1990年以降ですので、それより15年以上も 前に留学生を受け入れ、日本語を教えていたことになります。
私達の、カラフルで視覚的にわかりやすいツールを用いた日本語教授法は、独自に開発したもので、すべてがオリジナルです。
何度も何度もバージョンアップを重ね、現在のかたちになるまでには相当な時間がかかっています。
日本のろう学校からこれらの可視化した文法図形等が評価されたのは2008年のことで す。
日本語は「助詞」で文の意味が決まります。日本人は日本語を普段無意識に使っていますので助詞の勉強といってもあまりピンとこないかもしれません。
しかし、いざ、外国人に日本語を教えようとすると具体的に説明ができなくて困る例があります。
しかし、私達は文法をシステムとして教えているので、助詞の話で もわかりやすく説明することができます。
たとえば、「に」と「で」と「を」はセットで教えます。
お風呂「に」入ります、お風呂「で」洗います、お風呂 「を」出ます、のようなものです。
組み合わせや、連想を利用して教えると、「に」と「へ」の比較の時にも、役に立ちます。
例えば、「に」を使う例文では何 か目的があるため「に」を使い、「へ」を使う例文では方向だけを示しているのだなと、使い分けができるようになるのです。
日本語だけではなく、日本の文化も理解してほしいから、数多くの学校行事を行っています。
新宿日本語学校では、日本をいろいろな角度から見て、楽しんでもらいたいということで、数多くの学校行事を行っています。
もちろん東京だけではなく、北海道や島根県の海士町など日本のあちらこちらを見てもらいます。
また東京周辺でも、日本人の知らない東京もけっこうあって楽しいですよ。
私達は、日本語の文法を中心に教えているのですが、文法だけでなく日本文化も理解してほしいと思っています。
例えば、香港のサマーコースの学生が来た時には、午前中は勉強し、午後からいろいろな所へ出掛けたりします。
ゴミ処理場や、防災館。 大学生との交流会、浴衣で盆踊り、風鈴作り、紙すき、お茶会など、盛りだくさん(笑)。
今日も、以前台湾のサマーコースに参加した学生がたまたま日本に遊びに来たと言って学校に寄ってくれて、職員と一緒にラーメンを食べて帰りました(笑)。
そうやって、みんなが楽しい思い出を作って日本を好きになってくれるといいですね。
この間、NHKの取材・撮影も受けました。
「資格☆はばたく」という番組で、第1回「日本語教師ってどんな仕事?」(2011年7月6日(水)放送)で ご紹介いただきました。
新宿日本語学校には35ヵ国から学生が集まり、学生の弁も立つ、さらに教授法や教材がビジュアル的で、カラフルでおもしろいツールを使用しているということで取材頂いたのだと思います。
語学の勉強はやはり楽しい環境の中で行うのが一番効果があると考えています。
35カ国以上の国から学生が日本語を勉強しに来ています。
新宿日本語学校では、1クラス約15名で習得レベルに合わせてクラス分けをしています。
初級、中級、上級に加え、ビジネスクラス、観光ビジネスクラス、さらには教師養成クラスもあります。
また、生活漢字クラス、毛筆書道クラスなどの特別クラスも受けることができます。
新宿日本語学校江副式教授法は難しいことでも必要なら最初から教える方法をとっています。
例えば授業初日から漢字の音・訓読みをどんどん教えていますし、日本人でも正し く使うのが難しい尊敬語や謙譲語も独特のシステムで練習させています。
世界35ヶ国から学生が来ていますので、教師がきちんと日本という国を把握していないと学生に対応することができないことがあります。
常に世界の動きに敏感でいることも必要です。
学生は留学ビザで進学を目指す学生もいれば、短期ビザで日本語を勉強しながら、日本の文化に触れたいという学生もいます。
欧米系が多数派のクラスもあれ ば、東南アジアの学生が多いクラスもあります。
しかし、クラス分けの際には、進学希望かどうかとか、成績も考慮しますが、必ず仲間ができるようにしています。
いろいろな国の学生がいるクラスでも、学生が一人ぼっちにならないように、一つのクラスにできるだけ同じ国の学生が2人はいるようにします。
また、国費留学生もいますし、難民認定を受けている学生の受け入れも行っています。
進級に関しては、出席率が一番重要ですが、3ヶ月の学期の間に中間、期末と2つ大きな試験があり、その試験もクリアしなければなりません。
みんなよく勉強します。
大学進学、就職のサポートも、懇切丁寧に行っています。
大学進学を目指す学生は大変な思いをして勉強していますので、私達もサポートはしっかりと行っています。
午前中は通常クラスを受け、午後には留学試験対 策クラスとして小論文クラス、日本語クラス、文系数学、理系数学などの授業が無料で受けられるようになっています。
指定校推薦で進学する学生のために面接 指導なども行っています。
日本で就職を希望する学生も増えてきたので、ビジネスクラスは大いに役立っていると思います。
「日本語でプレゼンテーションができる」「日経新聞が読める」という到達目標を掲げていますが、基本的なビジネスマナーも身につけることができます。
エントリーシートの書き方やグループ面接の受け方まで指導することもあります。
日本語学校は外国の学生が自分の目標を達成するために「通りすぎていく」いわば、通過地点の学校だと思います。
学生それぞれの行き先は大学であっても、会社であっても、本国であってもいいわけです。
その他の仕事としては、日本語教師養成や日系ブラジル人の日本語教育にも力を入れています。
そのための教科書作りも私たちの仕事だと考えています。
今、日本語教育は外国人だけでなく、日本のろう学校の先生方や日本の小中学校の先生方にも注目されています。
言葉の教育だけでなく日本文化も私たちが伝えて行くことができるかもしれません。
日本ではほとんど知られていませんが、日本語から中国語になった言葉も多くあります。
例えば中国でも「銀行」は「銀行」です。
世界で銀をベースにした貨幣経済は日本だけのもの。
銀本位制だからこそBANKは日本語で「銀行」になり、それが中国に渡り、中国語になったというわけです。
近代インフラ系の言語の 多くが日本から中国に行ったものです。
このように日本はすごい財産を持っているのに、日本人は自分たちの財産を知らな過ぎると言わざるを得ません。
オリジナルの教材を使って、独自の教授法で、わかりやすく楽しく日本語を身に付けていただきます。
新宿日本語学校では、ほとんどオリジナルの教材を使用して授業を行っています。
校長がその大半を作っていて、市販の教科書はあまり使っていません。
大学受験のための基礎教科の教科書(数学)も新宿日本語学校の先生が作っています。
それを他の学校がご購入くださいます。
また、ビジネスの教科書も他の専 門学校がまとめて買ってくださいます。
新宿日本語学校私達は日本語教育にはパソコンを使った教材作りも必要だと考えて、養成講座でインデザインなどのパソコンソフトの使い方もレクチャーしています。
教授法も独自のやり方で行っています。
たとえば、「階段を上る」と「バスを降りる」を比べた場合、「~は~をー」という同じ文型になりますが、「を」の意味は全然違います。
最初の「を」は通過 の「を」。階段を上る、角を曲がる、空を飛ぶ、浜辺を歩く、など通過する場所を示します。
「バスを降りる」の「を」は、離脱の「を」。
お風呂を出る、大学 を卒業するなど離れる場所を示します。
それから対象の「を」というのがあり、パンを食べる、テレビを観るとかになります。
日本人はパンを食べる、テレビを観るなどの対象 の「を」はすぐにわかりますが、通過、離脱の「を」はピンと来ないことが多いと思います。
こういう分析を、私達はオリジナルの教材を使って可視化してわかりやすく楽しく教えていきます。
海外との信頼を築き、国内での社会的活動にやりがいを感じています。
地震に関しては、東日本大震災が起こる前から、いつか起こるであろうと考え、学生全員に非常袋を配布するなど体制を整えていました。
また、日本に来たばかりの学生を連れて池袋防災館に社会見学に行き、地震や、消火器の使い方などを実際に体験してもらいます。
卒業生は毎年250名前後で、今年は約230名でした。
毎年250名ほどが入ってきて同じくらいの学生が出ていき、常時約500名は在校しています。
しかし、今年は地震の影響もあって現在、在学生は約300名になってしまいました。これは仕方のないことだと思います。
新宿日本語学校は5ヶ所に海外事務所をもうけております。
また、海外の日本語学校や大学と提携し、教師を派遣しています。
ベトナムはもう 20年以上前から。フランス、アメリカは10年ぐらい前から、香港も23年前からです。
おかげさまで各国との信頼関係もしっかりと構築できています。
また、いろいろな国からバランスよく学生に来てもらい、楽しく効果的に勉強ができるようにという方針で運営しています。
海外から来た学生の留学生活を、どう成功させるかということを考えるのが私達の仕事だと考えています。
結果的に、新宿日本語学校に来てくれて、学生数も増えることになるかもしれませんが、あくまでそれは結果なのです。
また、我々が開発した教材が、ろう学校でも役立っているのが嬉しいことです。
ろう学校の先生方は本当に熱心な方が多くて、いつも私達は勇気づけられています。
学生と教室以外のいろんな場所にも出掛けて行きます。
新宿日本語学校は、ゴールデンウィークも休まないで開校しています。
4 月に入学したばかりの学生が突然5月から1週間休みだと言われてもどう過ごせばよいか困ると思いますので。漢字クラス、会話クラス、歌のクラス、お茶、折 り紙といったクラスを用意しています。
私達のモットーは、みんながやらない、やれない、やりたくないクラスをしようと(笑)。
新宿日本語学校これまではゴールデンウィークに学生が事故を起こしたり、事件に巻き込まれたりすることもあったのですが、ゴールデンウィーククラスを始めてからはゼロに なりました。
ですから学校が開いていることは日本語学校の場合プラスになると思います。
さらに、お盆クラス、年末年始クラスもありますから年中無休と言え ます。
そして、だた勉強するだけではなくて、セラピーウォークと言って奥多摩を10キロ歩くというのをしたり、月に1度、旅行探索クラブというのを行い、いろいろな場所を探索したりします。
毎年1月は谷中の七福神めぐりをします。さらに歌舞伎鑑賞会とか、自転車の乗り方教室とか、お花見、富士山バスツアー、ディズニーランドとか、これでもかこれで もかと楽しいことが盛りだくさん。バーベキューもやりましたし、カヤックにも乗りました。日本の過疎地にも連れて行きます。
私達、先生が大変でも、学生みんなが楽しく過ごせるようにと、人のできないことをやろうとあれこれ考えていつも実行しています。
日本のろう学校や、さまざまな日本語ニーズに応えています。
日本語学校の役割は、単に外国人に日本語を教えるだけではないと思っています。
私達では、隠岐、会津、北海道など、地方の過疎地に学生を派遣し、過疎地の人々と外国人の交流の場作りも行っています。
また、日本のろう学校でも教えています。
現在、手話から携帯メール等IT系にコミュニケーション手段が変わってきています。
メールとなると文章を打つので 日本語の文法がしっかりとしていないといけなくなります。
日本語は「クラスを出る」「クラスに出る」のように助詞一つでまったく動詞の意味が変わってしま いますので、助詞の使い方を正確に知らないと日本語の文章は 書けません。
さらに、ろう学校対象の教授法の教科書も作っています。
外国人の子供たちがたくさん日本に来ているので、そういう子供たちに対しても、日本語教育の面でいろいろとサポートしています。
さらに加えて、海外における日本語普及のためにも一役買っています。
今後は、もっと、いろいろなことをやっていきたいと考えています。
日本の若い人達に対しても、私達の知的財産を駆使して貢献したいと思っています。
プロフィール
新宿日本語学校は、1975年に江副隆愛、江副勢津子、息子の隆秀の親子三人によって設立されました。
最初は、個人経営の会社、それから、個人立認可各種学校、そして、学校法人立各種学校と少しずつ発展して現在に至っています。
今は、高い進学率を誇る東京都認可の日本語学校として人気を博しています。
平日クラスの他に、短期、夜間、日曜、プライベート、ビジネス、JLPT対策、EJU対策、サマー、日本語教師養成科など、バラエティーに富んだクラスを開設。
さまざまな日本語教育のニーズにお応えし、35ヵ国から留学生を受け入れています。
新宿日本語学校の大きな特色として挙げられるのは、独自に開発した日本語教育カリキュラムや教授法です。
長年の研究を重ねた結果、日本語は「情報」と「述部」から出来ていて、その間にある助詞は二列である、といったような画期的な日本語理解を展開。
この文法理解は「江副文法」と呼ばれ、外国人に対する日本語教育だけでなく、日本のろう学校、一部の公立中学校などでも実験的に導入されています。
独自のオリジナル教材、文法理解は、多くの日本語教育の場面で貢献し、これまで多くの学生がこのような教授法で日本語を学んでいます。
さらに日本語および日本文化の素晴らしさを伝えていく文化交流の場としての機能も併せ持ちます。
★学校法人江副学園 新宿日本語学校
http://www.sng.ac.jp/japanese/