「インテリアコーディネーター」のこれまでと未来

インテリアコーディネーター

インテリアコーディネーター講座を運営する「町田ひろ子アカデミー」の町田ひろ子校長に、インテリアコーディネーターの資格や仕事内容についてお伺いしました。


(2010年7月掲載)

インテリアや住宅関連業界への関心が高まる今、インテリアコーディネーターの資格を持っていることがスタンダードになりつつある。

インテリアコーディネーターの資格は、インテリアとか住宅関連業界においては持っていることが「普通」になりつつあります。
ですから、就職の際、 当然取得しておいた方がいいし、その方が結果的に有利です。
たとえ、取得していなくても今後予定があることを面接の中でしっかりと意思表示することが大事 です。

私は、日本で初めてインテリアコーディネーターというキャリアを提唱したわけですけど、その理由は、海外に比べて、日本でインテリアとか住宅関連の仕事をするのはそれなりの知識がないと難しいといえるからです。
家を建てるとか、インテリアに凝るというのは、高額の買い物になるわけですから、やはり、お客様も勉強されるわけです。
だからプロと呼ばれる人は、それ以上に、もっと知識を持っていないとお客様は安心して任せられないということになります。
業界への関心が高まる今だからこそ、インテリアコーディネーターはこれまで以上にもっと知識を広げることが大切です。

今でこそ人気の職業ですけど、私が提唱しはじめた頃は「インテリアコーディネーちゃん」とか言われたくらいです(笑)。

私たちは、学校と、実際の業務を行う設計事務所を運営していますので、インテリアコーディネーターがこれから身につけなければならない仕事の中身だとか経験だとか、またプラスアルファとして取得しておいた方が有利な資格が何なのかがわかります。
インテリアコーディネーターの資格は、たとえるならば自動車の運転免許のようなものです。
自動車の運転免許には学科(交通法規)と技能(実地)の試験がありますが、まったくそれと同じです。
インテリアコーディネーター試験は、この学科の試験なのですね。ですから、車を走らせるといった技能を同時に勉強しなくてはいけない。

私たちのアカデミーのセールスポイントは、学科と技能の両方を教えることができるということです。
今年のインテリアコーディネーター試験の総受験者数は約12,600人で、そのうち合格者は2,760人です。
合格率は約21.9パーセントとなり、これは毎年のことですが厳しい数字といえます。
私たちのアカデミーでは、生徒の約半数が合格していますのでたいへん健闘していると思います。

また、私としましては、インテリアコーディネーターという仕事の一番の”ウリ”は、「一生できる仕事」だということ。
年齢を重ねても続けられる仕事ですから、生活体験が仕事にどんどんいかされます。
そう考えると、インテリアコーディネーターの資格は、この業界に入るための第一歩として考えると最適な資格といえるのではないでしょうか

インテリアコーディネーターの仕事の守備範囲は広く、働く場所(会社)によって、さまざま。

私たちのアカデミーでは力を入れていることもあって卒業後はハウスメーカーに行かれる方が多く、また、家具、照明、キッチンといったインテリアエレメントメーカーにも多く就職されています。
インテリアコーディネーターという職業は、勤める会社によってそ の役割はさまざまで、「営業」「設計」「インテリアコーディネー ター」と役割がはっきりと分かれている会社の場合ですと、営業が 住宅を受注すると、設計が設計をはじめ、ある程度固まってきた段 階で内装、家具、照明などの相談でインテリアコーディネーターの出番となります。

一方、他の会社になりますと、営業のフロントに近い所で活躍するインテリアコーディネーターの方がいらっしゃったりします。
たとえば、お家の履歴がわかっているハウスメーカーさんの場合ですと、リフォームの提案に際して男性の営業マンが訪問するよりは、インテリアコーディネーターが「こんにちは」と入っていく方がスムーズで、その場でお客様のご要望をお聞きし、プランを提案することもできるので重宝がられています。

さらに、私たちでは、企業の方をお呼びして生徒がプレゼンテーションをするという公開授業を行っています。
企業の採用担当の方が「何人でも採用するからうちを受けてください」と心強いお言葉をくださったりするのですよ。

キャリアカウンセリングを徹底。就職は決まるまで、しっかりとサポートしています。

今年は、就職率(卒業生の就職希望者の)90パーセントを達成しました。
ただし、皆さんには粘り強くあちこち受けまくっていただきましたが(笑)。

インテリアコーディネーターの仕事というのは、キャリアアップがはかれるので、就職してからが本当のスタートといえます。
たとえば、最初は照明からスター トしたけれども、リフォームをやって、次は一戸建てを、そして今は病院を専門にしているという方もいらっしゃれば、ずっと店舗を専門にされている方もおられます。

一つひとつ経験を積んでいくことでキャリアアップしていける良さがインテリアコーディネーターにはあります。
今は、どこの企業も、即戦力を求めて いますから、私たちでは個人の成績や得意なものを考慮してキャリアカウンセリングを徹底して行い、就職先が決まるまでしっかりとサポートをし続けています。

私自身、日本の住まいをもっとよくしたいとか、女性の社会参加をもっと積極的に進めたいとか、そのような使命感を持っていますので、ビジネスだけにとどまらない情熱を持って活動しています。

インテリアコーディネーターを目指す方の大半は女性ですが、最近では男性の生徒さんが増えています。

私たちのアカデミーの生徒の98パーセントは女性ですが、最近は男性の希望者が増えていて驚いています。
たとえば、39才の男性がインテリアコーディネー ターになりたいとアカデミーに来られます。
面談してみると、良い所にお勤めの方なのです。
ただ、「このまま自分は歳を取ってもいいのだろうか」と考えておられます。
女性も40才の壁をこえる時、結婚も含めいろいろと考えるものですが、男性もそうみたいです。
自分の好きなことを仕事にする最後のチャンスと思 うのがこのぐらいの年齢らしいです。

男性の方でも暮らしにこだわる人は多く、私がインテリアコーディ ネーターは女性に向いている職業だと言ってきたのは、結婚や子育てで会社にいられない方に社会参加してもらおうという理由からで、アメリカやヨーロッパでは男女の比率は半々くらいといった所でしょうか。

イ ンテリアコーディネーターは専門職ですので、経験値がないと仕事を最後までできませんし、自分のお客さんを持っていないとたくさんのお給料はもらえませ ん。
月給ベースで言いますと、だいたい20~25万円くらいが一般的だそうです。
そんな中すでに年収2000万円クラスの人が女性ですけど、何人か出てき ているというのを聞いています。
ただ、そのような方は管理職に近く、我々が言っているインテリアコーディネーターという仕事というよりはインテリアコー ディネーターを管理するポジションであったりします。

もっと、日本発のものがあってもいいんじゃないか、と思っています。国際的にも活躍できる人を育てていきたい。

日本のキャリアは、これからの展開の仕方によって、もっと海外でいかせるものだと思います。
今日、日本のライフスタイルは海外から非常に注目されています。

たとえば、ある有名デザイナーが、日本の坪庭付きのお風呂を提案していますが、それって本当は日本のものじゃないですか。
ですから、日本の、もともとあった「いい暮らし方」をユニバーサルなものに、世界に通用するスタイルに直して、新しいライフスタイル提案することが大事なのではないかと思っています。
そういう意味で海外でも活躍できる人材を育てたいというのが、私の夢でもあります。

実際、今、イタリアのプロダクトの約半分は、インターンシップも含め現地にいる日本人デザイナーが手掛けたものだったりします。
優秀な人がみんな海外へ出て行ってしまっている。
もちろん、また日本に帰ってくるのかもしれませんけども。
JADの加盟社はそれぞれ専門職の資格を育てている素晴らしい企業が多いですので、ぜひ、日本のキャリアを海外へ向けても積極的に発信していただきたいと強く希望します。

今、求められていることを敏感にキャッチし、プラスアルファの資格取得も。

私たちが今もっとも力を入るのが、マンションリフォームマネジャーの資格です。
日本は、これから少子高齢化で都市型住宅が増えて、マンションで暮らす人が増えてくることを考えるとかなり需要があるのではと思います。
現在、リフォームのマーケットは、およそ9兆円と言われており、そのようなマーケットの拡大から考えますとインテリアコーディネーターというソフトな資格 とは異なる、どちらかと言いますと建築士の資格に近いマンションのスペシャリストがどうしても必要になってくるのではないでしょうか。

私としては、インテリアコーディネーターの資格に加えて、これから持っておいた方がいいと思うのが、ライフスタイルプランナー、マンションリフォームマネ ジャーです。
さらに言いますと、福祉住環境コーディネーターの資格であったり、あとはスカイフロントコーディネーターといいまして、屋上のガーデニングと 壁面緑化に関する資格です。
高齢の方たちに向いているガーデニングということで、福祉ガーデニングプランナーなどこれからの仕事も挙げられます。

このように、私たち住関連業界には、時代とともに求められる資格が色々あります。
より専門化させて、クオリティを高め、安心して一般の人が仕事を頼めるような資格 を複数持っていることが大事になると考えます。。

少子高齢化の時代、資格を持つことは大きなアドバンテージとなるでしょう。JADの加盟社は、安心、信頼できるパートナーとして皆様を応援しています。

少子高齢社会の中、これからはもっと「資格の時代」になってくると思います。
小学校、中学校、高校、大学で学ぶアカデミックな教育よりも、社会に出てからの、より専門性を高めるため、キャリアをいかすための資格が強く求められることでしょう。
「クオリティオブライフ」、自分にとって豊かな老後を考える上でも、資格をいくつか身に付けながら、長く働くことを考えられる方がいいと思います。
私たちの場合ですと、京都型というのでしょうか。オンリーワンをめざしていますので会社自体はそんなに大きくなることはのぞめません。

私たちのような会社はJADに加入し、たくさんの仲間とともに、一緒に発言していくことが大切。
そして、みんなでコミュニケーションをはかることで、改善とか、新しいものをつくりだす等が実現できると考えています。
JADは、民間の教育事業を行っている団体(社団法人)として厚生労働省とコミュニケーションできるパイプがあり、お客さまに信頼と安心をお届け出来ます。

プロフィール

町田ひろ子アカデミー 代表取締役 町田ひろ子

武蔵野美術大学産業デザイン科を卒業後、スイスで5年間家具デザインを研究。
’75年にアメリカ・ボストンへ渡り、「ニューイングランド・スクール・オブ・アート・アンド・デザイン」環境デザイン科を卒業。
’77年に帰国し、日本で初めて「インテリアコーディネーター」のキャリアを提唱。
’78年に「町田ひろ子インテリアコーディネーターアカデミー」を設立。
’85年「学校法人 町田学園」設立。現在、全国6校のアカデミー校長として、教育活動に務めている。
また、一級建築士事務所・㈱町田ひろ子アカデミーの代表取締役として、インテリア・プロダクトデザイン・環境デザインと幅広いジャンルのプロジェクトを手掛けている。
’00年からは、インテリアコーディネーターなど住環境関連のスペシャリストを派遣する人材派遣会社・㈱アイシースタッフの会長も務め、企業と人材を結びつける機会も提供。
’04年には、英国の名門インテリアスクール「KLC school of design」と提携をし、国際的に活躍できる人材の育成にも力を注いでいる。
’07年4月からは東京・表参道に新しくアカデミーをオープン。

★町田ひろ子アカデミー ホームページ
http://www.machida-academy.co.jp/