小出 最後に、もう一つ「自己啓発を実践したいけど経済的に余裕がない」という声がありました。
実は自分たちが知らないだけで、国の助成制度も充実しています。
その点を永瀬様に教えていただきたいと思います。
永瀬 若者や女性の活躍促進が政府の最重点課題の一つとなっており、厚生労働省では、職業能力開発の施策として、若者等の中長期的なキャリア形成の支援、あるいは育児休業中や復職後等の能力アップに取り組む企業への支援などを進めています。
そうした中で、自己啓発に関連した施策も充実が図られており、3つの施策についてご紹介します。
一つ目は、企業等を対象としたキャリア形成促進助成金です。
これは主に中小企業に対する助成で(一部のコースは大企業も対象)、職業訓練などを実施する事業主に対して訓練経費や訓練中の賃金を助成し、労働者のキャリア形成を促進するものです。
様々なコースがありますが、注目していただきたいのが、この3月に創設された「育休中・復職後等能力アップコース」と、労働者の自己啓発を支援する「自発的職業能力開発コース」です。
育休中・復職後等能力アップコースは育児休暇中の自己啓発、復職後、再就職後の能力アップのための訓練を支援します。
キャリア形成促進助成金を利用していただいた事業主に、利用状況の効果のアンケートをとったところ、約3割強が「資格取得させるのに役立った」「従業員の自発的な能力向上や資格取得を促すことに役立った」と回答しており、訓練そのものの効果だけでなく従業員の自発的な取組にもつながっていることがうかがえます。
二つ目は、働く人を対象とした教育訓練給付です。
これは雇用保険法に基づく給付制度で、労働者が自ら費用を負担して教育訓練を受け、修了した場合に、その教育訓練にかかった費用の一部に相当する額を支給するものです。
現在、厚生労働大臣が指定する教育訓練給付の対象講座は9,084講座(26年4月1日現在)あります。
すべて資格取得や技術のスキルアップ等、仕事に役立つ、就職につながるものです。
この制度については、10月1日から拡充を予定しており、厚生労働大臣が専門的・実践的な教育訓練として指定した講座を受講した場合は、給付割合を引き上げ、中長期的なキャリア形成を支援することとしています。
例えば、看護師や介護福祉士など業務独占資格、名称独占資格の取得を目指すものや、専門学校と企業が連携して編成した職業実践専門課程、専門職大学院などで指定基準を満たす講座が対象となります。
最後に、そうした職業能力を見える形にしていく、職業能力評価制度についてです。
物づくり分野を中心とした技能検定制度はすでにありますが、これに加えて企業横断・業界共通の能力評価の「ものさし」として業界検定を新たに創設していくことを推進しています。
その第一歩として、今年度から「業界検定スタートアップ支援事業」に着手し、モデル事例として実施してみてどのような成果や課題があるか検証することとしています。
対象分野としては、非正規雇用労働者の活用が進んでおり雇用吸収力があるなどの観点から、対人サービス分野を主に想定し、具体的には、流通業として百貨店の販売スタッフ、健康産業のフィットネスクラブの店舗運営、学習教育業として塾の講師などを対象とすることにしています。
これらの分野は女性が活躍されている業界であり、能力の「見える化」が進めば、パートやアルバイトを経験した後に正社員や管理職への道が開けたり、育児等でいったん退職後も必要な人材としてスムーズな職場復帰が可能になることが期待されます。それは企業にとっても採用のミスマッチを防止するなど、多くのメリットがあると考えられます。
小出 今回は「女性の学び・自己啓発を支援するには〜学習・職場・施策の3つの観点から理解する」をテーマに「自己啓発の現状」「学習の継続のノウハウ」「女性が活躍する現場の秘訣」「スキルアップを支援する国の助成制度」をお三方にお話いただきました。ありがとうございました。