館農 香菜 様
(インテリアコーディネーター/町田ひろ子アカデミー修了生)
●インテリアコーディネーターを目指すきっかけ
私は現在、3人の子どもがいる母であり、フリーランスとしてインテリアコーディネーターの仕事をしています。
インテリアコーディネーターを目指したきっかけは、私が小さい頃にさかのぼります。私は3人姉弟の長女。小さい頃は一つの部屋を姉弟で共有していました。私が率先して、3人快適にすごせるよう模様替えをしたり、すきなものを飾ったりしてインテリアを工夫するのが好きでした。中学生になり、自分だけの部屋を作ってもらえたことで、毎日カーテンや壁紙を決めることにワクワクしていたことを今でも覚えています。
大学卒業後、私は銀行員になりました。私の地元は京都です。京町屋や老舗のお店に囲まれた歴史ある街で働くなかで、とても印象に残った経験があります。京町屋の喫茶店をリフォームする案件で銀行員として資金面のお手伝いに携わりました。リフォーム前は昔からの常連のお客様がほとんどでしたが、京町屋を生かした明るい店内に生まれ変わったことでお客様の年齢層が広がり、海外からのお客様も来るような人気店に生まれ変わりました。リフォーム後のお店でコーヒーを頂きましたが、味や食器は変わっていませんでしたが、いつもよりコーヒーがおいしく感じたように思いました。インテリアが変われば人の行動や心も変わります。このようなインテリアの力を目の当たりにし、いつか私もインテリアに関わる仕事をしたいと考えるようになりました。
●”インテリアコーディネーター資格”との出会い
結婚後、夫の東京への転勤と自身の妊娠を機に銀行を退職。その時訪れた京都の女性向けハローワーク「マザーズジョブカフェ」でもらった資格一覧の資料のなかに「インテリアコーディネーター」という文字を見つけ、インテリアを仕事に出来る資格があることに驚き、くぎ付けになりました。小さいときの記憶や社会人になって経験したことなどが一直線に繋がった感覚を覚えました。
それから、インテリアコーディネーターの資格について調べていく中で、「町田ひろ子アカデミー」の門をたたくのにそれほど時間はかかりませんでした。出産後のキャリアについての悩みもアカデミーに相談することが出来たので、妊娠中ではありましたが、アカデミーに通う決意が出来ました。慣れない東京での暮らしの中で、アカデミーが自分の居場所になっていたように思います。
●町田ひろ子アカデミーでの経験
学習内容は実践的で、課題ごとにお客様にヒアリングをし、ご希望を伺うところから始まります。ご希望に沿ってプランを提案するので、独りよがりではないお客様の立場に立った提案力が身につきました。また、色や素材、インテリアの歴史に至るまで基礎をしっかりと学ぶので、ただなんとなく選んだものをコーディネートするのではなく、その物の特性を踏まえたうえで選び、コーディネーションしていくことを学びました。
課題は大変だと思うこともありましたが、ショールームを巡るフィールドワークや、プレゼンテーションなど、手と足を動かす勉強は毎日が刺激的でその忙しささえも楽しいと感じていました。
また、アカデミーでの「人との出会い」は人生の糧になっています。講師の先生は現役のインテリアコーディネーターで、実務経験の話も交えて教えてくださいます。課題の進め方に悩んだ時も、小さな時間を積み重ねるようにアドバイスをして下さいました。またアカデミーでは、様々な年齢で、様々なバックグラウンドがあるクラスメイトが肩を並べて勉強します。課題や資格の話だけではなく、育児について、キャリアについて、人生についても相談し合える仲間でした。今でもその関係は続きます。
出産にあたり休学をしましたが、いざ子どもが産まれてみると、子育ては想像をはるかに超えて大変で、どうやって復学し、資格を取って卒業をするのか不安でした。
そこで、在学中にアドバイスを頂いた「小さな時間の積み重ね」を実践してみることにしました。復学を決めてからは、資格取得を視野に入れ、移動時間や病院などの待ち時間などを活用し、食器洗いや洗濯物畳みの家事をしながら参考書に目を通す工夫もしました。また、子どもが寝ている間は最も集中できるので、家事や子どもの寝かしつけなど家族に協力してもらって、まとまった時間を作れたことも合格の一助になりました。資格試験に合格したときは涙が出るほどうれしく、協力してくれた家族も一緒に喜んでくれて感謝がつきませんでした。
それから、課題へのモチベーションは、実生活に結び付けて考えることで、保つことが出来たと思います。アカデミーでは、はじめに「暮らしありき」だと学びます。お洒落で美しいインテリアであっても、使い勝手がいい・掃除しやすいなど、機能が整っていないと美しく保てず手間がかかり、豊かな生活とは言えません。実際に習ったことを生かしてインテリアを変え、家事育児の効率化をはかりました。使いやすく整理収納をし、家具の配置などで家事動線を工夫する中で、家族みんながチームとして協力し合える体制を整えていきました。一筋縄ではいかないことも多々ありましたが、「インテリアが好き!」「インテリアコーディネーターの仕事がしたい!」という強い気持ちが、努力を継続する一番の鍵でした。
●資格を活かした仕事と生活
進路を考える中で、間取り変更や造作家具などの工事を含むインテリア提案をしたいと考えて、建築士事務所の求人に応募しました。未経験で建築士事務所で働くことは難しいのではないかと考えていましたが、卒業間近の頃には、取り組んできた課題をまとめたポートフォリオができていたので、未経験でも自信を持って自分をアピールすることが出来ました。
建築士事務所でのはじめての仕事は、新卒採用と設計補助、他にも書類整理や買い出しなど、出来ることは何でもやりました。2020年のオリンピックを控えたある日、空港のお手洗いの全面改修の案件があり、「内装材の選定をやってみないか」と言ってもらい、念願のインテリアコーディネートに携わることが出来ました。提案した空間が実際に形となり、多くの人に使ってもらえる喜びと感動を知りました。
仕事以外にも、私は学習した内容と自身の経験を生かして、自宅のリフォームにも取り組みました。自身が家事育児をするなかで、「もっとこうあって欲しい」と思うことがたくさん見つかり、それらの解決策を考えアイデアにし、アカデミーで教わったように図面やパースを描いて工務店に持っていきました。リフォーム後は、子どもにとって危険な場所が改善されたり、水回りが効率よく使えるようになったり、家族それぞれ別のことをしていてもいつも気配を感じる間取りになり、子どもと笑顔で過ごせる時間や家族のコミュニケーションが増え、家族みんなが快適に過ごせるようになったと思います。
自宅のリフォーム後、我が家に友人を招待することも多くなりました。不動産の仕事をしているママ友が我が家のインテリアを見て、一緒に仕事をしないかと声を掛けてくれました。仕事の内容は、子どもと住むがもっと楽しくなるようなマンションブランドを立ち上げること。今までの自分の経験が人の役に立てるのならこんなに嬉しいことはありません。
そうして生まれたマンションブランド“cotosumu”は、2020年子どもたちを産み育てやすい部門においてキッズデザイン賞を受賞しました。子どもと笑顔で過ごせる住まいのアイデアと住空間をもっとたくさんの人々に届けたいと考えはじめたことをきっかけに、今はフリーランスのインテリアコーディネーターとして個人の住宅や店舗のデザインに携わっています。
私のインテリアコーディネーターとしての目標は、これからも人に寄り添った空間を提案し、より多くの人に届けること。そして、インテリアの大切さをより多くの人に知ってもらうことです。空間が変われば、人の気持ちも行動も変わります。辺りを見渡せば、まだまだ画一的な空間が多く、もっと多角的な視点が必要だと感じています。当たり前に感じているその空間は、そこで過ごす人にとって本当にベストですか?当たり前を疑うことが大切だと考えています。
また、私は人には「一人ひとり使命がある」と考え、出産、育児、家事、介護や介助、心身の変化など、当事者となって経験したあらゆることは、人に寄り添うやさしさやアイデアとなって人の役に立つことが出来ると思います。
●「好きなこと」への挑戦は、まず行動に移すこと
新しいことや「好きなことに挑戦したい!」と思ったとき、一歩踏み出すには難しい状況だったとしても、今じゃないと考えずに、今だからこそ自分に出来ることがあると考えて、半歩でも良いから行動に移し、前に進んでみること。時には上手くいかないことがあっても、努力する姿は周りを巻き込み応援してくれる人が現れます。
これからも周囲への感謝を忘れず、ポジティブな思考で前に進んでいきたいです。
ご清聴ありがとうございました。