- 検定試験の導入にあたっては、現場での指導やOJTを補完するような狙いもあるのではないかと考えたのですが、いかがでしょうか。
山崎 正直なところ、この仕組みを取り入れたのは上司の育成力には差があるということからスタートしています。
育成力が弱い上司の下につくことは大変不幸なことですし、それを補完するような教育ツールを用意しないといけないと考えていました。
ビジネス・キャリア検定試験についてはあくまで知識的な面をカバーするもので、実際の育成に関しては知識以外にも様々な要因が絡んでくるものです。
とはいえ、少なくとも知識面においては、どのような上司の下に就こうと、同じ条件の下で評価される仕組みが必要だと考えたのです。
また、当社の場合は、地方拠点も数多くあります。
本社にいようが、地方の小さな拠点にいようが、同じ条件の下で学習することができ、かつ評価される仕組みが必要だと考えました。
- どこにいても誰の下にいても、きちんと努力すれば同じ基準で評価する、という仕組みがあることは重要ですね。
制度として設けることで、それが会社から従業員の方への明確なメッセージとして伝わると思います。
地方の方もきちんと会社が見ているよ、ということが伝われば安心して働けるのではないでしょうか。
山崎 地方の拠点によっては人数が4人程度の営業所で、場所も都市圏からはかなり離れた場所に設けていることもあります。
こうした場所にいると、「知的刺激」を失いがちです。
検定試験や通信教育を通して、知的好奇心を刺激できればとも考えています。
長谷川 地方拠点では、1人でひと通りの業務をこなさなければならない環境にいるため、ある程度仕事ができるようになると、もう1人前になってしまったように錯覚してしまうこともあります。
しかし、地方拠点の場合は仕事の領域に偏りもありますので、こうした検定を受けることで、自身の能力について、体系的に把握することができるのではないか、とも考えています。
山崎 ビジネス・キャリア検定試験では、分野別にホワイトカラーの仕事を体系的に整理しています。
厚生労働省が定める「
職業能力評価基準」とリンクされていて、この基準を活用できるということに利点を感じたのも導入のきっかけでした。
なかには、「人事の2級と生産管理の2級、レベルは同じなんですか?」という質問を受けることがあります。
私は「どちらもレベルは同じです。」と言い切っています。
職業能力評価基準は、分野ごとにその道の専門家が吟味し、階層ごとに必要な能力を整理したものであり、その基準に沿った検定ですから、自信をもって伝えています。
- 人事制度そのものとこの検定がリンクしている、ということなのですね。
ビジネス・キャリア検定試験を、企業の経営者人事担当者の方にお勧めするとしたら、どのような方を想定されますか。
山崎 あくまで個人的な考えですが、一定の規模感がある企業の方がよりフィットするのではないでしょうか。
小規模な企業では、1人で複数の仕事を回していくことも多いと思いますが、検定で問われる知識は専門性が高く、1つの仕事に深く取り組む機会が少ない方には取り組みづらいように感じます。
従業員数が100名以上の企業であれば、検定に向けた学習を通して、自社でどういう業務が行われているかを体系的に整理し、今後どのような業務をしていかなければならないことに気づきを得る、という効果が期待できます。
また、組織規程で組織が担うべき機能・役割を再定義する、教育面や会社の業務を再整理する、といった活用方法もあるでしょう。
人事部門の方は、この検定を取り入れるかどうかについて、まずは一度、真摯に向き合ってみてはいかがでしょうか。
- 真摯に向き合うということが非常に大切ですよね。
どうしても「自分の会社は特殊だから」という話になりがちですが、それはいったん置いておいて、汎用性の高い体系的な知識を習得することに向き合ってみてほしいですね。
山崎 そうですね。
実際にはこうした話は、上位層よりも30代くらいの若手社員の方が真摯に受け止めてくれるかもしれません。