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教育事業者へのナレッジ

【中央職業能力開発協会】西田和史様

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日本式の技能検定を
ベトナムに輸出


中央職業能力開発協会
技能振興部 次長 西田和史 様
(2013年11月掲載)

中央職業能力開発協会(JAVADA)技能振興部 次長の西田和史様に、東南アジアにおける日本型の技能試験の普及・定着を目指すODA事業(技能評価システム移転促進事業)について、ベトナムでの事例をもとにお話をお伺いしました。

正式な国家検定として覚書により日本の技能検定を採用するのは海外初

JAVADAでは、日本の技能検定試験および技能競技大会の手法(技能評価システム)を移転することにより、各開発途上国の技能労働者育成に貢献し、国際経済の成長を促すことを目的とした事業活動を国から受託して行っています(技能評価システム移転促進事業)。

昨年(2012年)12月にベトナムで実施された第1回の普通旋盤の国家技能検定試験は、同事業の支援により、日本と同じ技能検定課題を使用して実施されました。
その後、本年(2013年)5月、ベトナム政府側から合格証書に当協会名の付記に関しての要望があり、 中央職業能力開発協会としても、日本の技能検定試験の海外への展開を促進させる趣旨に合致することから、これに対応することとしました。
インドネシアやタイではすでに一部日本式を認めていますが、今回はベトナム労働傷病軍人社会事業省(MOLISA)が覚書を交すことで、国家として実技・学科ともに日本式を採用するという初めての事例となったのです。

日本と同様に、韓国もベトナムでの人材育成を通して技能検定等国際協力の展開には積極的な姿勢を見せており、とくに機材等ハード面での支援に力を入れているようです。
そのような中でも、日本式の技能検定の採用に至ったのには、10年以上に渡る当協会協力事業の積み重ねによる信頼感と、公正公平な手法に対する現場レベルでの高い評価、JICA(国際協力機構)長期専門家による検定制度構築支援、国家間で産業・人材育成の協力の合意(日越共同イニシアチブ)があったこと等が良い影響を与えたのだと考えています。

ベトナムへは多くの日系企業が進出しており、その数は約1,000社と、この10数年で約3倍に増加していると聞いています。
ハノイ近郊の工業団地の発展が示すように、製造業関係が充実しています。また当事業の関係では、デンソー、パナソニック、荏原製作所がこれまでに技能評価システムの普及に協力している他、ベトナムでの技能試験への受検参加に他の日系企業からの参加も見られるところです。

日本式の技能検定の採用は、ベトナムに拠点を置く現地日系企業が従業員採用や技能者の評価に活用されることが期待できます。
そして将来的には、日系企業の関連する地場の中小企業の技能者の能力向上にもつながることが期待されます。

また、ベトナム側も技能者の能力向上につながることを期待する他、検定試験の信頼性がさらに向上し、品質が保証されることで、国内のみならず海外からも認められる試験となるでしょう。

技能検定の導入から現在までの状況と展開

日系企業をはじめ、海外企業の進出により、ベトナムは工業国化を目指す中で大きな成長の時期にあります。
ベトナム人は勤勉で日本人に近いと思いますし、ベトナムの対日感情は良好と認識しています。
現地日系企業で働き、日本で研修を受けた技能評価者は優秀で、現地でも大きく活躍していると聞いています。

しかし、民間の地場企業がまだ弱く、また他の同じ東南アジア諸国に比べると、まだ英語が通じないケースがあります。
今後、さらに発展をしていくという段階で、日本式の技能検定が導入されたことに大きな期待を感じています。

日本のものづくりの基盤である技能検定が、海外に認められ、輸出されたという点で、日本のものづくり人材育成のノウハウが海外に普及拡大された意義は大きいと思われます。
また、日本企業にとっても、海外での人材育成に日本式の技能検定を更に活用していこうという機会となりました。

ベトナムにおける技能検定について、今後の展開としては、金型関連職種の導入支援に力を入れていくこととしています。
これまでの技能検定導入の実績として、MOLISAは、2011年、鉱山(採掘)のパイロット検定を国営企業の主導で実施、これを国家検定の第1号とし、また同年12月「メカトロニクス」、「グラフィックデザイン」、「鉱山の建設技術」及び「鉱山の電気設備」の職種で、ベトナム国家技能検定の第5号まで拡大されました。
2012年12月、裾野産業としての金型産業職種関連の分野として、「CNCマシニングセンタ」及び「普通旋盤」をそれぞれ第6号、第7号として認定されています。
特に、当協会は「普通旋盤」職種の協力に力を入れてきました。

今回の「普通旋盤」は、日本の技能検定と同じ課題内容で、準拠した方法で実施されました。
評価者については、日本の検定委員の資格要件が当該職種について1級以上の技能を有し、実務経験15年以上の人たちであるのに対して、ベトナムでは、職業訓練施設指導員、企業では実務経験を積んだ技能者や職長、技術系の課長などが中心です。

受検対象者は、今回の「普通旋盤」試験においては、訓練施設の指導員を主な対象とし、能力向上の手段として活用している状況にあります。また、レベルの高い訓練施設の学生や、日系企業の在職技能労働者も加わってきている状況にあります。
受検者数は、最初のトライアルを加えて37人です。
これを一つのモデルとして、今後、発展、拡充させることが課題です。

そして、検定制度をより確かなものとするためには、指導員、評価者のレベルアップと、補佐員を含め、公正公平な技能評価ができる仕組みの確立が大切です。
制度の信頼性を高め、今後、「普通旋盤」を体系的なモデルとして、継続的な実施や他校への水平展開、民間企業との連携強化を進め、上位級導入を目指すことが一つの方向となっています。
また、フライス盤など他職種への導入拡大も目指していきたいと考えています。

技能検定の内容と基本的な流れについて

日本の技能検定は、基本的に在職者を対象としています。
但し、3級については、工業高校在学生も受検可能であり、現在、技能者の裾野を広げるために工業高校の学生(3級)の受検を勧奨しており、3級受検者は着実に増加しています。
平成23年度の受検申請者数は全部で781,539人となっています。

なお、技能検定試験とは落とすための試験でなく、これがなければ仕事ができないというものでもありません。
初級レベルの技能(3級)であれば、基本的な手順と動ができれば通るもので、決して難しくはありません。
また、3級が通れば2級に挑戦しようと意欲も出てきます。

技能検定の流れについてですが、日本では毎年、厚生労働省が実施計画を告示し、これに基づき当協会が試験問題の作成と全国の水準調整、各都道府県が実施の管理監督、都道府県職業能力開発協会が受検の受付と試験実施、採点評価を行っていおり、4つの機関が関わって実施している状況です。

ベトナムの場合は、MOLISA(ベトナム労働傷病軍人社会事業省)が試験問題を作成し、MOLISAにより認定された評価センター(職業訓練施設や工科系大学等)で検定試験が実施されている状況にあります。
まだ始まったばかりのため、前述のとおり評価者の育成も課題であり、8月の旋盤職種の検定においても、新たに訓練施設の指導員も評価者として加わり、評価者としての能力を身に付けた上で、他の施設に検定を広めていく準備を進めています。

現在ベトナム側では、今回の覚書署名を受けて、合格証書の様式など法律改正の手続きを行っています。
合格証書への付記など円滑に作業が進むよう、私たちもフォローをしていきたいと考えています。

今後は、2015年の東南アジア諸国連合(ASEAN)域内統合に伴い技能評価等検定資格の統合・共通化の動きも出てきており、こうした状況も視野に、日本式の技能検定の強み、メリットが理解されるよう働きかけていきたいと考えています。
また、来年ベトナムで行われるASEAN主催技能競技会に日本は招待されており、こうした機会も活用できれば、と思っています。

これからのビジョンについて

企業の中には独自の教育スキームを持ち、現地スタッフの育成にあたっているところもあります。
今回のベトナムの技能試験が日本方式を導入したことについて、ベトナムの日系企業からは人材育成、技能向上の手段として、大変有効であると評価を頂いています。
特に、会社にとって大きなメリットとして、安全衛生を会社全体として見直す機会となり、今までの自己流から適正な加工法を学んだということ。
そして、国家検定の継続実施の希望、適正な額であれば、今後は受検料を負担することも検討されているようです。

認定された技能の有効性や活用についてご説明すると、社内では労働者の技能習得意欲の増進や合格者に対する処遇改善に役立っています。
また社外においては、社会的地位の向上、再就職に当たっての評価の対象となり得ることが有効です。

一般論になりますが、「国内どこでも認められる」といった一定の基準で評価する検定試験は、合格しようというチャレンジ精神を生むこととなり、「合格すれば評価される」という点で、受講者・受検者のモチベーションは維持できると考えられます。

海外での人材育成で大変なことは、言語によるコミュニケーションに加え、日本の企業文化、働き方に対する考え方の違いを克服することが大きいと思われます。
個人的には、日本のものづくりの現場力には自信を持って良いと感じています。ただ、相手国の習慣や歴史、決定までのプロセスを認めた上で進めていく必要があります。
たとえば、ベトナムにも私たちJAVADAのような組織があったほうがいいのではないかと提案したことがありますが、ベトナムは政府主導で行い、既存の組織を評価センターとして認定し、新たな組織は作らないとハッキリと言われました。
相手国を認めた上で、上手くいっていること、いっていないことを正直に話しながら、物事を進めていくことが大切です。

ベトナムでは裾野産業における人材育成に重点に取り組んでいることから、JAVADAでは金型関連職種を中心に、技能検定が継続して普及拡大していくよう支援に力を入れていきたいと考えています。
今後、旋盤を体系的なモデルとして、受検者増や他校への水平展開、民間企業との連携強化を進め、上位級導入を目指すことが一つの方向となっています。
また、フライス盤など他職種への導入拡大も目指していきたいと考えています。

そして、ベトナムだけでなく、インドネシア、タイなど、既に日本式の技能検定を部分的に採用している国や、カンボジア、ラオス、ミャンマーなど今後、技能検定を導入する予定の国に対しても、日本のものづくり基盤となる日本方式の技能検定試験が円滑に移転され、各国の技能者の能力向上につながるように、私たちは支援を続けていきたいと思います。


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技能振興部 次長 西田和史 様

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