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教育事業者へのナレッジ

講演録【JAMOTE】ISO29990

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ISO29990:2010の規格概要と考え方


講演者:一般社団法人 人材育成と教育サービス協議会
中村 公美 様
(2012年3月掲載)

JADは、平成24年1月17日(火)中野サンプラザにて、『平成23年度 第2回 能開カレッジ』を開催いたしました。
当日は2つのセミナーを続けて開催致しました。
こちらでは後半に行われた『ISO29990:2010の規格概要と考え方』の講演録を掲載致します。

開発に携わった各国のエキスパートが共有した思い

先ほどの宮澤賀津雄 ISO/TC232国内審議委員会 委員長からのお話を踏まえまして、「ISO29990」の規格概要と、その考え方についてお話したいと思います。

ドイツの提案によりはじまった「ISO29990」の開発は、ドイツ、フランス、イギリス、オランダ、アイルランド、日本、韓国、オーストラリア、アメリカ、カナダなどが中心となって進められました。

まず初めに、実際にTC232の国際会議に出席し「ISO29990」の開発に携わった者としてお伝えしたいことは、この規格の開発に携わった各国のエキスパートが共有した思いです。

まず一つ目の思いとして、中小規模の事業者への配慮が挙げられます。
学習サービス分野におきましては、各国とも、大企業だけではなく中小企業の方もかなりいらっしゃいます。
ですから、事業規模に左右されないで、質保証に取り組める基準を作ろうと考えました。
さらに、国や地域が異なると文化も言葉も異なりますし、社会制度や教育に対する考え方なども異なりますので、各国における教育訓練の多様性にも配慮しています。

学習サービスに特化した規格を開発することが、「ISO29990」の開発に携わった各国エキスパートのもう一つの思いでした。
学習サービスの特性には、サービスが適応されたと同時に消費されるという同時性があります。サービスが創出、提供されると同時に消費されるということです。
しかし、その部分は切り離すことができません。
また、サービスを創出、提供する側と、サービスを消費する側によって、サービスに対する理解の仕方が異なるという不均質性もあります。
例えば講師によって質は変わりますし、状況によってもかなりサービスは変わってきます。

サービスには形はありませんので、触れることができません。
保存したり、取っておくことも基本的にはできないことが、学習サービスの特性ともいえます。

学習サービス事業者のコンピテンシーに焦点

「ISO29990」は、非公式教育・訓練における学習サービスで、学習サービス事業者向けの基本的要求事項です。
質の高い専門的な業務およびパフォーマンスのための汎用モデルおよび共通の枠組みを提供することを一つの目的としています。

学習サービス事業者のコンピテンシー(力量・技量)に焦点を当て、顧客が、そのコンピテンシー・能力開発に対するニーズや期待に対応できる学習サービス事業者を選択できるように支援。そのための基準となっています。
また、学習サービス事業者の認証にも利用できる規格ということで、開発されました。

「ISO29990」のわが国における対象機関には、学習塾、英語教室などの語学教室、民間職業訓練機関、資格取得を目的とする民間教育事業者、企業内研修を請負う事業者、生涯学習を支援する各種講座・教室などが想定されています。

「ISO29990」の主な構造は、学習サービスに関する要求事項ということで、学習ニーズの明確化、学習サービスの設計、学習サービスの実施、学習サービスの提供のモニタリング、学習サービス事業者によって行われる評価などから成り立っています。
学習サービス事業者によって行われる評価には二つの評価がありまして、一つは学習者が学習したその成果を評価する学習の評価。
二つ目は学習サービスを提供した、そのサービスに対する評価。

二つの評価が、ここでは挙げられています。
学習サービス事業者のマネジメントに関する要求事項は、事業者が質の高い学習サービスを提供するためには組織として適切に管理・運営されていることが重要であるという観点から盛り込まれています。

それぞれの要求事項の関係について

評価するのかと考えた場合、やはり利害関係者のニーズ、学習者がどのような適格性を持ってその学習サービスを受けようとしているのかをきちんと押さえ、そこに対する学習成果や学習利害関係者の満足度を見ていく必要があります。

「ISO29990」を理解する際、サービスに関する要求事項とマネジメントに関する要求事項が含まれている点が、よく誤解を招きます。
「ISO29990」は、質の高い学習サービスが満たすべき要件を定めるとともに、その事業者が質の高い学習サービスを提供するために必要なコンピテンシーにも焦点を当てたサービス規格です。
先ほども触れましたが、学習サービス事業者のマネジメントに関する要求事項は、事業者が質の高い学習サービスを提供するためには組織として適切に管理・運営されていることが重要であるという観点から「ISO29990」に盛り込まれています。
学習サービスを効果的に提供するためには、学習利害関係者のニーズをきちんと把握しなければいけません。

この利害関係者というのは、学習者であったり、実際に学習のその費用を払っているスポンサー、企業、雇用主、保護者等です。
学習サービスを設計する上で、きちんと学習サービスの目的および適用範囲の特定をしなければいけません。その内容を、然るべき利害関係者へ伝達しなければならないということも規定されています。

学習者の責任と義務、それから学習者だけではなく、学習サービス事業者が負うべき責任と義務、それから学習者とその学習サービス事業者の間で意見の相違や不満がある場合のその手順、学習成果の評価、スケジュール、学習サービスを受講するために必要な前提条件、スキルや資格などについても情報提供をしなければいけないということがあります。
さまざまな学習サービスの提供に関する要求事項があるのです。

学習サービス事業者のマネジメントに関する概要

学習サービス事業者のマネジメントということで概要をお伝えしたいと思います。

学習サービス事業者は、戦略を持って事業計画書を策定し、文書に記録しなければいけないということになっています。
ただISO29990は、公式教育・訓練(小中高校など)を除く学習サービス提供機関全般を(広範囲に)対象としているため、その活用には教育関係者としてのreadinessが必要となります。 例えば、学習塾と幼児教育や英会話スクールでは、教育目的・目標も異なり、その教育特性や教育手法も異なります。

「ISO29990」に対するその適合性や、マネジメントの有効性を継続するためには、きちんとマネジメントシステムを見直さなければいけません。
マネジメントシステムにおける「ISO29990」に対する不適合をあらかじめ予防する場合や、既に不適合が起こっている場合の措置につきましては、予防処置および是正処置も規定されています。
また、適切な財務管理システムを構築、確立しておかなければいけないということ。それから、学習サービスを提供する際のリスクを特定し、評価、管理するためのシステムを確立しなければいけないということも規定されています。

人的・物的資源の割り当てということで、先ほども少し触れましたが、どういう人的・物的資源を使うのかということにつきましては、どのような特定のニーズがあるのかを配慮して、学習のために必要な人的・物的資源を維持していかなければならないことになっています。

「ISO29990」への適合性とマネジメントシステムの効果的な実施維持を証明するためには、その内部監査の手順を確立しなければならないということ。
また、内部監査員の適性および禁止事項や、監査結果の明確な報告をし、その結果に基づいてどのような処置を行っていかなければならないのかということもあります。
フィードバックをしっかりと収集、分析、回答。それに基づいた対応を行うためのシステムを確立することも定められています。

講演者プロフィール

一般社団法人 人材育成と教育サービス協議会(JAMOTE)
中村 公美 様