- 増田様はGABAの前にニチイ学館にいらして「ISO29990」を取得されました。
なぜ取得しようとされたのか、また、取得過程で感じたことについてお伺いしたいのですが。
増田 「ISO29990」は、我々学習サービス事業者にとっても、とても興味深いものです。
それを証拠に学習サービス事業者の主要6団体が「ISO29990」の発行を受け、サービスの質の問題について業界の横の連携をはかる意味で学習サービス事業者団体連絡協議会を結成しました。
ニチイ学館が、なぜISOを取得したのかといいますと、理由は3つあります。
1つは教育産業のサービスの質を上げるということ。
本物しか売れない時代が来ていることを各事業者が気付き始めています。
2つ目は、顧客ニーズが非常に多様化していること。
今までは資格一辺倒だったのが、より実践的なニーズに即したものになってきています。
3つ目は、グローバル化への対応。
もともとニチイ学館は、グローバル化とは対極にある会社で、医療や介護といういわゆる国内の社会保障サービスを担う会社なのですが、グローバル化の波はここにも来ています。
「ISO29990」の取得過程で感じたことですが、個人的な見解になりますが、教育事業者というのは職人的なのですね。
ともすれば、学習者目線ではなく、教える側の目線に立ってしまう所があります。
そういう意味で、ISOの実際の要求事項を一つひとつ確認していった時に、この辺りが抜けていたとかこの辺りが弱かった、ということに気付かされた所があります。
- 永倉様、増田様のお話をお伺いして、何か補足説明がありましたらお願いします。
永倉 冒頭の説明でも少し触れましたが、今の増田さんのお話を伺って、サービスというものの難しさを改めて感じました。
品質マネジメントシステムの規格である「ISO9001」では、不良品を製造しないということだけではなく、万一不良品が作られたとしてもそれが市場に出ない仕掛けも含めて考えられています。
ところが、サービスというものは、作った時点で市場に出ていますので、ある意味待ったなしといえます。
そういう意味では受講者の目的やこちらが提供する価値、すなわち市場の中での質担保の質とは何だろうという観点から、きちんと議論できる指標が必要になるのを非常に強く感じます。
「ISO29990」は、B to C、すなわち個人学習向けのサービスに対する規格のようにも受け取れますが、それは勘違いであると思います。
企業研修におきましては今後いろいろと出てくると思いますが、今、企業では総合的な人材が求められています。
ですから、例えば、英会話もできるけれども、話す内容のスキルも高めたいというような、複数の研修を融合して一つの研修としてやりたいみたいなことも出てくるのではないでしょうか。
一つの研修事業者ではなく、複数の研修事業者を束ねるようなものですね。
そういう時に、複数の事業者も含めた質担保のための共通の指標として使えるのではないかという気がしています。